愛が重たいEXOのメインボーカル比較、後半の本日は、ギョンスとジョンデです。
前編はこちらからどうぞ…
ギョンスの歌の、その熱とソウル
昨日ジョンデの歌はアイドル的な音楽性から逸脱してると書いたけど、それで言うとギョンスのこのソウルフルな歌声も規格外だと思うんだ…
— 𝔸𝕡𝕣𝕚𝕝 (@kjd_april) 2019年9月6日
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以前も少し書いた通り、私が最初に「EXOのボーカル、とんでもないな!」と思ったのは、ギョンスの歌がきっかけである。韓国、いやアジアR&Bの大家である、ユ・ヨンジン先生以外に、これほどまでにソウルを体現できる歌手は、そうそういないと思う。SM内でギョンスは「ユ・ヨンジンが声帯で産んだ息子」と言われている、というのを見かけたことがあるが、まさにその通りだと私も感じる。
坊主頭で歌うのがこんなにセクシーな人、他にいます…?いや、いないよね…
ベッキョンの強みが「浮遊感のある、自由自在なフレージング」だとしたら、ギョンスの強みは「熱っぽさと爆発力」だろうか。彼の歌は本当に、いわゆるアジアのアイドル的な歌唱からは大きく逸脱していると思う。
ギョンスの歌を聴くといつも、声質とテクニックの奇跡的なマッチングに感動する。その厚みのある声質とも相まって、ギョンスの歌にはまるで60年代から70年代のソウルシンガーのような、何とも言えない「熱さ」があると思う。TrillとかRunと言われる(日本語で言うしゃくりとかこぶし、フェイク?)声の使い方も、ピカイチである。
[STATION] 유영진 X D.O. 'Tell Me (What Is Love)' Epilogue
例えば、Tell me (what is love)の冒頭部分。この歌い出し、yeah〜のパートが、いわゆるRunと言われるテクニック。ヨンジン先生はもちろん、ギョンスも実に簡単そうにこの部分を歌うが、ピッチをこれだけ素早く細かく上下させながら歌うのは、非常に難易度が高いはず。
私は海外のボーカルコーチのチャンネルを見るのが好きで、この曲に関しても色々な方のレビューを見たが、多くのコーチがTell me (what is love)におけるギョンスのRunを聴いて、「こんな難易度が高いRunを完璧にこなせるなんて…」と驚嘆しているのも、非常に納得。だって、こんな歌い方ができる歌手は、韓国はおろか、世界中見渡しても滅多にいないもの。
いわゆるソウルミュージックの歌手たちは、元々のメロディラインを装飾することが非常に巧み*1だが、私はギョンスはこれに関して、素晴らしい才能の持ち主だと思っている。普通じゃない(手放しの賞賛)。ギョンスには一度ぜひ、「今までどんな音楽を聴いてきましたか」と、事細かにインタビューしたいぐらいである。
こういったテクニックは、実はかなり声を選ぶと思う。ギョンスと同じ歌い方をベッキョンやジョンデがしても、おそらくどこかしら軽さが残って、良さが生きない(あるいは、背伸びしているように聞こえるかもしれない)。ギョンスの声には、ギョンスの歌い方が奇跡のようにぴったりと合っている。
そして客観性という観点で、ギョンスのセンスも最高だ(あくまで私の好みの話である)。EXOの中で一番、タメを効かせて粘り気のある歌い方をするのはギョンスだが、彼の場合、いつもそのさじ加減が絶妙。こういう歌い方は、やり過ぎると洗練から遠ざかる一方*2だが、ギョンスは決してやり過ぎにならず、ここぞというところで効果的にそういうテクニックを使っているからこそ、あの爆発力を発揮するのだと思う。
爆発力と言えば、ギョンスはシャウトも上手い。これもまた、ロックやポップスのそれではなく、ギョンスの場合はどこまでも「ソウル」寄りの歌い方。声量で言えばジョンデも驚異的だが、ギョンスの方がうんと温度の高い爆発を起こすイメージである。声といいセンスといい、こんな歌い方ができる20代の歌手がアジアにいるなんて、思いもよらなかった。
EXO D.O 디오 & CHANYEOL 찬열 - Love Yourself (Long Ver.) Color-Coded-Lyrics Eng l Han 가사 by xoxobuttons
未だに何度も聴いてしまう、ギョンスとチャニョルによるJustin Bieberのカバー。ギョンスのもう一つの強みは、この耳の良さ(チャニョルも良いと思うけど)。母国語でないにも関わらずここまで自然に聴けるのは、まさしく天性のセンスだと思う。
EXO-K_Special Stage 'Sabor a Mi'_KBS MUSIC BANK in MEXICO_2014.11.12
英語はもちろんのこと、メキシコで歌っていたSavor A Miでのスペイン語発音も素晴らしかった(実は私、大学で学んだ第二外国語はスペイン語。私はからっきしセンスがなかったが、音とラテンの音楽だけはたくさん聞いてきたので、ギョンスのスペイン語発音には驚かされた)。またこういうラテンのギターと、ギョンスの深くてセクシーな声は、素晴らしく合う!これも、未だに繰り返し聴いてしまう曲である。
先ほどのソウル的歌唱にしてもそうだが、ギョンスの場合、細かな音の違いを聞き分ける力に加えて、それを再現する力も極めて高いのだろう。演技においても、ギョンスは方言を完璧に習得しているという記事やコメントをしばしば目にするが、これだけ耳の良い人であることを思えば納得である。
特に洋楽を聴いていると、「ああ、ギョンスにカバーして欲しい」と思う曲が、山ほどある(いつか記事にしたいぐらいである)。演技にも恐ろしいほどの才能を発揮する人だから、きっと戻ってきたらまたあちこちから引っ張りだこになるのだろうけれど(そして私はギョンスの演技も大好きだけれど)、ギョンスの歌がもっともっと聴きたいと思う。彼の声とそのセンスは、唯一無二だから。
天井知らずの、ジョンデの歌唱力
前編の冒頭で触れた妹とのお遊びで、一番「どこを歌うと生きるだろう」と迷うことが多いのは、実はジョンデだった。
推しゆえに愛が深過ぎて、もはやジョンデの歌唱力について客観的な判断を下せる自信はあまりないが、冷静に客観的に、一人の歌手としてジョンデを見ると、ジョンデもまた、いわゆる「アイドル」歌手としては規格外であるように思える。
ジョンデの場合、まずはその声質が大きな特徴である。今でこそ本当に色々な声を聴かせてくれるジョンデだが、デビュー当時の音源を聴くと、彼が元々、極めて硬質な声の持ち主であったことがよくわかる。
そもそもの歌唱力が極めて高いので、どんな歌でも安心して聴けるものの、正直なところ、「あ、この曲のこのパートはジョンデの声には合わないな」と思うものも、中にはあった。もちろん、逆に「この曲のこのパートは、ジョンデ以外に考えられない」と思うものも、たくさんある。私はジョンデの声が大好きだが、生かし方を考える必要があるという点で、どんな歌を歌わせても器用に飲み込んでしまうベッキョンとは、ある意味対極にいるのがジョンデだと思う。
ところが、ここ数年のジョンデの歌を聴くと、恐ろしく表現の幅が広がっているのを感じる。以前にも、ジョンデの強みは「歌の持つメッセージを理解して、表現する知性」といった内容を書いた記憶があるが、もっと上手くなりたいという本人の想いと努力が、誰の目にも明らかなほどに、実を結んでいるのがよくわかる。
例えば、IUちゃんの「夜の手紙」のカバー。冒頭わずか10秒ほどを聴くだけで、見事にジョンデが描く世界に引き込まれてしまう。この曲でジョンデが使っているような、柔らかい声の出し方は、2017年のウィンターアルバムあたりから顕著である。この声のおかげで、彼の元々の強み、クリアで輝くような声が、更に生きるようになったと思う。
COEXに響き渡る美しい声だね…なんて自由自在に上手に歌うんだろ😢歌い終わって急に照れたような顔するのも胸きゅん過ぎる…pic.twitter.com/dkfSuz7x0I
— 𝔸𝕡𝕣𝕚𝕝 (@kjd_april) 2019年8月31日
SMTOWNの後にも書いたが、ジョンデの声は、とにかくよく響く。先日のバスキングで一緒に歌ってくれた10cmさん、コ・ヨンベさんが「ジョンデの声量に驚いた」と発言していたが、ジョンデの場合、声量×声質の掛け合わせなのか、特に生で聴くと「マイクの音量設定が1人だけずれているのでは…」と思うほど、普通ではない声の響き方である。とにかく、耳にダイレクトに声が届いてくるのだ。
韓→英→日なので多少ニュアンスに違いがあるかも。特にアイドルグループにおいては(パワーがある)強い声が必ずしも良いとは限らないことも…と前置きした上で、ジョンデのパワーと歌声のコントロールについて褒めた上で、隣で聴いていて非常に楽しかったと。
— 𝔸𝕡𝕣𝕚𝕝 (@kjd_april) 2019年9月4日
ジョンデの歌唱力の根幹をなすのは、間違いなく声量と音域の広さ。その上に、細やかな表現力やテクニックが加わって、もはや彼の歌はあらゆる世代を虜にしてしまいそうな勢いである。特に最近ジョンデが歌う曲たちは、いずれも普遍性が極めて高く、アイドルに興味がない人、「今っぽい」音に興味がない人たちにも、訴えかけるものがあると思う。
また、これはコンサートに行って生で歌を聴いてみて気づいたことだが、「口から音源」「CDを食べた」と言われる通り、ジョンデのピッチコントロールは非常に正確である。初期の頃のパフォーマンスを聴くと場合によっては不安定なこともあり、ジョンデの場合は「元から音程感覚に極めて優れていた」というわけではなさそうなので(ただしジョンデが不安定な時は他のメンバーや他の出演歌手も例外なく不安定なことが多く、音響の問題などもありそうではある)、これも経験と努力の賜物なのだろう。また、体力があり、そのエネルギーゆえに集中力が切れないところも彼の強みだと思う。今やライブパフォーマンスにおいてはEXOの中でも格段に安定感があることは、ライブ音源を聴いてみるとよくわかる。
ジョンデの歌はずっと上達し続けているように思えるが、やはりソロデビューというのは、彼の歌の世界を更に高いレベルに押し上げる、良いきっかけになったのだろう。声のコントロールの正確性がさらに増して、猛練習の成果なのか、もともと良く出る声が更に良く出ているように見える。
歌うジョンデを見ていると、歌が好きで好きでたまらないことが良くわかる。同時に、彼自身が自分自身の声の生かし方を、最もよくわかっているのだと思える。
ジョンデが自分自身の表現世界に真摯に向き合っていることが伝わってくるからこそ、聴き手側もこれほど心を動かされるのだろう。これから先もずっと、彼の好きな音楽を追求して欲しいと、私は毎日(出た!重い愛)祈っている。
EXOの奇跡
EXOの音源のアカペラバージョンを聴くと、メインボーカル3人だけでなく、メンバー全員の平均値が高いこともよくわかる。そして前回の冒頭でも書いた通り、EXOの場合、それぞれの個性が見事にバラバラで、9人(最近は8人になることも多いけど…)の声が合わさると、本当に多層的で面白い音楽が出来上がる。色々な音楽を聴いても結局EXOに戻ってしまうのは、きっとそれが理由なんだと思う。
メインボーカルの強さはもちろんのこと、全員の「今のベスト」を見せてくれたという意味で、私はLove ShotよりもTempoを推したい。この曲のコーラスワーク、EXOの良さが最大限に生きていて、何度聴いても耳が幸せ。ああ、やっぱり早く完全体が見たいなあ。
…とまあ、こんな感じで1週間ほど、EXOのメインボーカル3人のことばかり考えていました。私が1週間かけてこねくり回した考えを妹に話したところ、「ベッキョンはおしゃれに上手く歌う、ジョンデはストレートにうまい(演歌歌わせてもうまい)、ギョンスは洋楽。私はギョンスが一番すき!」と、実にあっさりとまとめられてしまいました。うん、簡単に言うとそういうことですね…