【抄訳】Billboard / EXO's 'Obsession' Album: How the Songs Came Together ③

ずいぶん間が開いてしまいましたが、ビルボードの記事の日本語訳、ようやく最後まで仕上がりました。今回も全訳ではなく抄訳ですが、それでも長いのでご興味のある方だけどうぞ。

 

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【Baby You Are】


EXO (엑소) - BABY YOU ARE (Color Coded Lyrics Eng/Rom/Han/가사)

 

Wendy Wang(作曲、編曲):

Mozella、Benjamin Ingrossoと私の3人で、2019年の1月にLAでセッションをしたの。もともと3人で書いた曲は、ベンジャミンのソロプロジェクトのためだったから、彼の音楽を聴いた後、一緒にライティングをする日のためにアップビートでダンサブルなものを用意してた。3人ともクラシックなダンスミュージックのファンなので、そっち寄りの音にしたかったのね。シンセ・ベースにアコースティックな要素を加えると面白いと思ったので、曲中に出てくるアコースティック・ギターを弾いてみたの。EXOがこの曲を使うことがわかって、ラップを書くため友人のAllakoi Peeteを呼んでアイデアを試してみた。ラップの部分では、シンセ・ベースの音をもっと808ベースっぽい世界観に変えてるの。他のセクションとの差別化を図りつつ、曲のグルーヴ感を維持したくてね。

 

ベースとドラムの音がノスタルジックでしょう。Moogのアナログ・ベース・シンセサイザーは、実際に70~80年代のポップ・ミュージックで多く使われていたもの。このシンセの高音で演奏されるキーボード・メロディもサビの後に入っているし、ドラムの音の一部には、80年代や90年代のポップスでよく使われていたドラムマシンを利用しているの。

 

Allakoi Peete(作曲):

(Wendyが)送ってくれたトラックはファンキーでポップなものでね。今のラッパーはみんなTrapビートでラップするだろ?彼らが送ってくれたサンプルもまた…全部Trapだったね。だから「うーん、彼らが求めている、もうちょっとロックでポップでファンキーな雰囲気と、このトラックを合わせるにはどうしたらいいかな」って感じだった。まるでパズルやルービックキューブみたいだったね。「完成できるかな?」と。

 

訳注 Trapとは:

トラップはここ数年特に盛り上がっている、ヒップホップルーツの音楽ジャンルです。BPM(テンポ)ゆっくり、そこにチキチキ…というハイハットの音が乗り、音数は少なくスカスカ…雑な説明ですが、そんな音楽です。

【第6集 OBSESSION】レビュー(前編) - 私がジョンデに堕ちたのは

 

 

【Non Stop】


EXO (엑소) - NON STOP (Color Coded Lyrics Eng/Rom/Han/가사)

 

Andreas Öberg(作曲):

この曲は2018年夏、ソウルで行われたSMのソングキャンプで、僕とDaniel "Obi" Klein、Charli Taftの3人で書いたものだ。(キャンプに参加する)前日に、僕らは実際にEXOのコンサートに行った。SMはその時点で沢山の曲を準備していたけど、アップテンポでディスコファンクな曲が足りないと言っていたんだ。コンサートに行って、すごくインスピレーションが湧いたよ。セットリストの中には何曲か昔の曲もあって、それに対する観客の反応を見られたのは本当に良かった。そのコンサートで感じたエネルギーの波に乗った感じだね。


僕ら3人が共同作業をする時は、まっさらな状態で始めるんだ。ドラム、基本のビートを決めて、コード進行やキーボード、ギター、ベースラインを行きつ戻りつしながら加えていく。今回は、観客が一緒に歌いたくなるようなキャッチーなフックを書こうと思ったんだ。ライブパフォーマンス向きの曲にね。Bフックの"A little bit of love, my love non-stop"がまさに「一緒に歌って叫ぼう」って感じなのは、そういう理由だよ。

 

それからObiがブラスのサンプルを見つけてきてくれた。Earth, Wind & Fireっぽい雰囲気のコード進行でね。それ以外のキーボード、ドラム、ベース、そしてギターは全て生演奏だ。すごくオーガニックな(訳注:デジタルでない)作品だよ。

 

いつも通り、何層にも重なるボーカルのレイヤーを使っている。僕らも好きだし、SMのアーティストがよく使う手法でもある。典型的なSMのサウンドはMJやStevie Wonderなんかの、クラシックなアメリカのR&Bの影響を受けているね。SMのそういう音楽性、音の重なりは独自性があって好きなんだ。

 

 

Daniel "Obi" Klein(作曲、編曲):

僕らは月〜金曜のソングキャンプに参加するために、日曜にソウルに着いた。その日はEXOのコンサートの日で、コンサートを観たいかと事前に聞かれていたんだ。それでホテルに荷物を置いて会場に向かったんだけど、これが本当に大きなインスピレーションになったね。2万人の会場で、2万人のファンが音楽に合わせて叫んでいるのを見ることができたし、同時に会場の様子も見られた。翌日からEXOの曲を書き始めたんだけど、僕らは大きな会場に映える曲をイメージしたんだ。その時のソングキャンプで書いた最初の曲だよ。

 

原点はGap BandとかMichael Jacksonみたいなもの、あとは最近のBruno Marsのようなサウンド、それからまあ我々が持ち込んだあらゆる音だね。でもとにかく、スタジアム映えする曲でなければいけないという明確なインスピレーションがあったね。

 

 

Charli Taft(作曲):

SMはライターそれぞれの強みをよくわかっている。どの種類の曲をどのライターにオーダーすればいいか、よく理解しているんだ。僕らがいかにもアメリカっぽい、レトロな音を作ることを良く知っているんだよね。

 

彼らは変化に富んだ、飽きないセクションが本当に好きなんだ。僕らは他の商業音楽ではあまり耳にすることがないようなコード進行が大好きだから、彼らのスタイルに合うのかもしれない。ジャズやR&Bからインスピレーションを得るのもいいよね。

 

 

【Day After Day】


EXO (엑소) - Day After Day (Color Coded Lyrics Han/Rom/Eng/가사)

 

Deez(作曲、編曲):

この曲は2019年6月のソングキャンプで、Mike Daleyと共作した。彼とはBad Dreamも一緒に書いているが、曲作りのプロセスはその時と似ていたんだ。Mikeが持ってきたトラックのうち一つを選び、僕が再構築して、コードをいくつか修正し、ボーカル部分をチョップ(訳注:切り刻んで再構成)して、それからメロディ部分を書くというのをJeff Lewisも加えて行った。 この曲は音楽的にはいくぶんクラシックだね。それで、ギターとナチュラルなサウンドだけで十分に魅力的だと考えた。エモーショナルにするために、ボサノヴァのテイストと都会的なR&Bのテイストも加えることにした。

 

チェンのパートを録った時、また驚かされた。この曲はアルバム最初のレコーディング曲で、チェンが(録音する)最初のメンバーだったんだ。普段ボーカルディレクションをする時、僕はまず自分が作った指示をアーティストに伝えるんだが、僕は彼にデモを聴いた後の感情を表してみて欲しいと言ったんだ。チェンが最初のverse(1メロ)を歌うのを聴いて、すぐに彼がまた成長したのだと感じたよ。とても自然だったんだ。ひんやりとしていながら温もりもあり、冬の表現として完璧だった。彼のレコーディングがあまりに素晴らしかったので、オリジナル版を彼のボーカルに合うよう少し修正したほどだよ。それぐらい良かった。

 

 

Mike Daley(作曲、編曲):

EXOのことを考えるときには、いつもコンサートを念頭に置いている。踊ったりパフォーマンスするのではなく、落ち着いてちゃんと歌える歌がなくてはいけない。この曲はそういう曲だ。生ギターとベース、それからドラムだけの要素だけの構成だから、コンサートの中でクールダウンするのに最適だ。彼らにはずっと昔”Moonlight”を提供したが、(その後)何度かコンサートを観て、彼らが踊らず、落ち着いた雰囲気で音楽性の高いR&Bの楽曲を歌っているのはとても良かった。この曲(Day After Day)はそういう曲の中に加わるんじゃないかな。

 

 

【Butterfly Effect】


EXO (엑소) - Butterfly Effect (Color Coded Lyrics Han/Rom/Eng/가사)

 

Greg Bonnick(作曲、編曲):

Haydenと僕はロンドンでこの曲の骨組みを作って、EXOのために取っておいたんだ。とは言っても、完成させるには毎年ソウルで行われる恒例のLDNソングキャンプまで待ったんだけど。 この曲のコードや雰囲気を感じ取りながら、僕ら(LDN noise/Adrian Mackinnon)はソウルフルで 気持ちの良い曲を書くことができた。以前EXOに提供した僕らのお気に入りの曲、”White Noise”のようなね。この曲の原題は”Angel of the Night”で、歌詞は「ある女の子が人生に現れて、暗闇の中から光へと導いてくれる」という内容だった。

 

この2曲はいずれもミッドテンポで、心地よいメジャーコードの曲だね。“White Noise”の方が多少アグレッシブで電子音が多いのに対して、”Butterfly Effect”はエレキギターや生楽器が入ることでもう少し軽やかな雰囲気だ。

 

 

Adrian McKinnon(作曲):

GregとHaydenが夜遅くのセッションでこの曲を最初に演奏してくれた。最初に気づいたのはこの曲の持つ温かな雰囲気だね。メジャーコードで心が癒されるようなコード進行で、弾むような雰囲気もあって、気に入ったよ。その時感じた温もりと、作業を開始した時間帯がデモの方向性を決めたように思う。彼らとは前からたくさん共作してるから、次々アイディアが出てきた。

 

White Noiseのデモは、元々僕らは"Somebody"と呼んでいたんだけど、孤独で誰かを探している人が、実は(探している相手は)自分が思っているよりもずっと近くにいるのに、そのことに気づいていない、というコンセプトだったんだ。この曲に関しては、初期段階で僕らが考えたアイディアはコーラスの後の"oh, oh, oh yeah, yeah!"の掛け声部分だね。加えて、この曲のコーラスのメロディは弾むような感じでビートに乗っている。(White Noiseと比較すると)より温もりがあって、アップビートに感じられるかもしれない。

 

このアルバム(Obsession)はEXOの強みや色調を見せるのにふさわしい、よくできたアルバムだと思う。そんなアルバムの曲の中に”Butterfly Effect”が一つの色として加えられていることを嬉しく思うよ。

 

 

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さて、今更ながら自分の過去記事も読み返してみたんですが、今回のこのインタビューはまるで答え合わせをしているようで、すごく面白い内容でした。

 

個人的には"Baby You Are"のシンセとドラムマシンが本当に80年代のものを使っていたことに非常に納得したのと、"Non Stop"のインスピレーションが80年代頃のソウルミュージックと最近のBruno Marsだという話に「だよねそうだよね!」という喜びを感じました。EXOの音楽はSMの中では一番 R&B色が強いと常々思っているんですが、こういうバックグラウンドを持ったクリエイターが集まっていることを考えれば、それも当然ですね。

 

それから、"Day Ater Day"でDeez氏がジョンデのヴォーカルの成長に言及してくれているのにも嬉しくなりました。これ、私がジョンデペンだから他のメンバーに関する言及をわざと訳していないとか、そんなえこひいき太郎ぶりを発揮したわけではございませんのよ。おそらくそれぐらい、ジョンデの進歩が目覚ましく、なおかつ最初に録音に入ったメンバーだったので印象深かったのかなあと思っています。

 

そうそう、ノイズ先生たちが"White Noise"について語ってくれたのも嬉しいですね〜!あの曲、好きなんです。ご本人たちが仰る通り、確かに電子的なサウンドなんですが、それがあの歌詞の世界観にマッチしていて、あの頃の「まだわずかに少年ぽさを残した」EXOちゃんたちが歌うと、独特の色気があったなと思います。

 

 

ずっと頭の片隅にあったこの記事の訳が終わって、すっきりしました〜!相変わらずジョンデへの愛情は衰えるどころか日々増しているので、過去素材をしゃぶり尽くす勢いで楽しんでますが、そろそろ何か供給があったらいいな…その時は滝のように涙を流してお迎えするからね…と思う今日この頃です。