【第6集 OBSESSION】レビュー(後編)

 

愛情過多、かつオタクの妄言じみた前回のレビューを想像以上に多くの方が読んでくださって、ありがたい限りです。気を良くして、愛が重すぎるアルバムレビュー、後半に参りたいと思います。

 

★前編はこちら…

ribboninthesky.hatenadiary.jp

 

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第6集 OBSESSION(2019年11月27日発表)

 

6. Baby You Are

カッティングギターに乗せたすほちゃんの歌い出しも、その後のジョンデ、ベッキョンの流れも、それぞれの持ち味がよく出ていて、とっても良い。みんな本当に良い声…!この最初のverseは90年代のブリットポップを思わせる音だが、そこから一転して、サビでは80年代の影響を感じさせるエレクトロポップへ。この「80年代ぽさ」の正体は、①リバーブ(エコー)たっぷりのスネアドラム、②”cuz baby you are”のフレーズの後ろで流れるシンセ、③よく動くベースラインの3点だろうか。こういう80年代のリバイバルは、ここ数年また一つの流れになっている*1


そこからまた、ラップのパートになると音数がグンと減る。このほぼリズム+ベースだけの音に、セチャンのスタイリッシュなラップ!彼らは今回のアルバムで、また更に進化していると思った。TempoやObsessionでの気合の入った攻撃力の高いラップパートも良いが、彼らの持ち味はこういう都会的で軽やかなラップにこそあるように思う。二人とも、どんな曲でも、何をしていても溢れ出る品の良さがあるのでね…


この曲もまた、単なるエレクトロポップにとどまらず、1曲の中に様々な要素を詰め込んだ「EXOらしい」曲。

 


7. Non Stop

Baby You Areがエレクトロポップなら、こちらはファンクポップ。キレのいいビートもギターのリフも、華やかなブラスの音も、こういうのは無条件で血が騒ぐ…!序盤から色々な音が聴こえてくるが、これがうるさくならず、都会的な音にまとまっているのがさすがのSMクオリティ。ファンクポップもまた、ここ数年リバイバルして一大ジャンル化している。きっかけになったのは間違いなく、Mark RonsonとBruno MarsのUptown Funk (2014) だろう。

 


Mark Ronson - Uptown Funk (Official Video) ft. Bruno Mars


CBXっぽい音だと仰る方が多いこの曲、私も例に漏れず、この曲を聴くと「ああ、しうちゃんの声が聴きたいな」と思う。こういう曲に映える声のジョンデとベッキョンはもちろん、みんなとても生き生きとしてカラフルなボーカル&ラップを披露してくれていて、この明るくて楽しい空気感は確かにCBXっぽい。これはぜひ、ジャズクラブみたいなセットで、ブラスバンドを従えてパフォーマンスして欲しいな〜。めちゃくちゃ盛り上がりそう!

 


8. Day After Day

この歌い出し、Wham!の"Careless Whisper"みたいだなと思ったのは私だけだろうか…*2。この曲はメロディもいかにも「泣きのメロディ」という感じだし、重なるコーラスはうっとりするような美しさ。こちらも音数が少ないので、全員のボーカルがよく映える。攻撃性の高い前半の曲調から一転して、最後2曲は耳馴染みの良い、いわゆる正統派のポップスになるわけだが、これがキラキラアイドルポップスに終わらず、洗練された大人の楽曲に仕上がっているのは、今のEXOならではかと。


ここでもジョンデとベッキョンの安定感が光っているが、私がハッとさせられたのは2回目のverse(1:16あたり)でのチャニョルちゃんの歌声。高い音域での安定感が増して、元々の色気のある歌声に磨きがかかっている!喉の手術の後、ベッキョンと同じボーカルコーチについていると言っていたが、きっと相当練習したのでは…?2:47からの、ジョンデとの声の重なりもとても良い。双方の声の色気が2割増しである。

 


9. Butterfly Effect

LDN Noise先生、こんなにメロディアスなポップミュージックも作れるのか!と驚いた曲。このメロディラインにコード進行、よほど偏屈な人を除いて(笑)、嫌いな人はいないのでは?この曲の持つ透明感はBIRDに通じるものがあるが、この曲にはちゃんとせふんちゃんの出番が用意されている(BIRDは大好きだけどせふんちゃんパートが皆無なのは罪深いぞ)


ここまで王道ポップスは、最近のEXOからすると(日本語作品を除いて)かなり珍しいと思う。こちらもDay After Dayに続き、アイドルポップらしい、それこそ5〜6年前に歌っていてもおかしくないような曲だが、彼ら自身が大人になったことと、全体の歌唱レベルがその頃より桁違いに上がっていることもあって、余裕を持って聴ける、大人のポップスに仕上がっているように感じる


また褒めるが、歌い出しのチャニョルちゃんの声がとても素敵。彼はどうしてもEXOの中ではラップを任されがちだが、この魅力的な声は歌でもぜひ生かして欲しいところ。そういう意味では、今作ではずいぶん歌のパートが増えて、私はとても嬉しい。

 

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ふう…ようやく全曲書けました。

 

第6集はObsessionというタイトルの通り、タイトル曲以外にもリフレインがあちこちで使われていて、テーマ性を感じる作品でした。不穏な始まりから、やがて夜が明けていくように美しいバラード曲に移行し、王道ポップスの,Butterfly Effectで終わりを迎えるという、物語性も感じる構成でしたね。これまで、テーマの統一感という意味では第4集がピカイチだと思ってきましたが、今回の第6集はそれを上回る力作だと思います。

 

これまでずっと、KPOPらしさとは何だろう…と考えていましたが、このアルバムは私のその問いに対する一つの明確な回答でした。さまざまな要素を統合して、一曲の中でダイナミックな変化を見せること…こういう音楽を作り上げたプロデューサーの腕前ももちろんですが、これを歌いこなせるEXOの実力、やはりKPOPの王様という称号にふさわしいと思います。本当に、素晴らしい作品に対する感謝の気持ちでいっぱいだよ…どこまで進化するの…

 


そして最後に、熱意のあまり、メンバーごとの私のお気に入りパートも書いておきますね!(どこまでも暑苦しいオタクだな…)


◆すほちゃん

すほちゃんの進化を一番感じたのは、Obsessionでの第一声(0:29-0:36)かもしれません。こんな表現もできるんだ!という新鮮な驚きがありました。柔らかく伸びやかな声はもちろん今作でも存分に生かされていますが、すほちゃん自身にもずいぶん余裕が生まれたのでは…?と感じるパートがたくさんありました。Non Stopのブリッジ(2:23-2:30)なんて、すほちゃん以外が歌うのが考えられないパートです。 Ya Ya Yaの軽やかで中性的な声も(1:25-1:34)好き。すほちゃんは、コーラスに入った時の仕事ぶりも素晴らしいんですよね。

 

◆ベッキョン

ベッキョンはレゴのお城に立てる旗のような存在、もっともSMアイドルらしい象徴的存在…と評したレビューを見ましたが、まさにその通りだと思います。また上手くなってるよね!?Grooveの歌い出し(0:05–0:25)然り、曲の随所で見せるシャウト然り、コーラスに回った時の抜群の安定感然り、彼の音楽的センスと歌唱力はまさにEXOの旗。持って生まれた華やかな声に加えて、その時々で一番適切な歌い方を選ぶことができる、知性のあるボーカリストだと思います。

 

◆ジョンデ

好き!以上!…と言いたいところですが、もう少しちゃんと考えましょう。やはりソロ活を経て、ジョンデの表現力はより一層磨かれたのだと痛感します。今年はソロ活が多かったのでつい忘れがちでしたが、彼は昔から、実はグルーヴ感のある曲で華やかな声を響かせるのも上手な人なんですよね*3。今作では元々の音域の広さ、パワーやコーラス職人ぶりに加え、ソロで見せてくれたような繊細な声の使い方が際立っていて、ますます惚れ直しました。これほどマルチに歌える人がいると、プロデューサーとしてはさぞありがたいだろうなぁと思います(結局めっちゃ語るやないか…)。

 

◆チャニョルちゃん

散々褒めていますが、チャニョルちゃんは持って生まれた声の良さに加えて、音楽的なセンスが素晴らしい人だと思います。ピッチの正確さ、リズム感、音楽を解釈する力。やはり自分でも音楽を作る人なので、客観的な視点があるのでしょう。何をやらせても抜群の安心感があるし、何よりご本人の音楽愛が伝わってきます。Non Stopでの明るい声も好きだし、Jekyllでの歌声(2:18-2:26)もとても良い。Grooveで聴かせてくれる囁くような声も、ものすごい色気じゃないですか…好き…

 

◆カイくん

カイくんもすほちゃん同様、Obsessionでの歌い出し(0:23-0:30)に驚きました。今まで柔らかさの目立ったカイくんの声に、一本ピーンと芯が入った瞬間!Ya Ya Yaの歌い出しも、今までにない明確な意図を感じさせるボーカルで、素晴らしい進化ですよね。それから、今作ではカイくんの声も本当に色気が増したと思います。Grooveの2回めのverseもすごく良いし、Baby You Areでの声の使い方(1:24-1:32)も、腕を上げた感がすごい。来年はいよいよソロがあるのかな?楽しみですね!

 

◆せふんちゃん

まず最初、MVのティーザーが出てきた時点で「せふんちゃんの歌声!なんて魅力的な…!」と即座に妹(セフンペン)に連絡したぐらい、私はせふんちゃんの目覚ましい進化に感涙しました。今作のせふんちゃんの声からは「自分はこのパートをこう表現したいのだ」という思いがビシビシ伝わってきます。前作Tempoで格段に進化したキレの良さはそのままに、ユニット活動で存分に披露してくれた、あの少しも余分な力の入らない都会的なラップは、せふんちゃんならではの持ち味だと思います。歌にしてもラップにしても、せふんちゃんは偉大なヒョンたち誰かの真似をするというわけでもなく、独自の進化を遂げていて、私は彼のその姿勢も尊敬しています。

 

 

 

相変わらず暑苦しく思いの丈を吐き出してしまいました。ここまで読んでくださった奇特な方、ありがとうございます!さあ、来週はいよいよ宮城でのコンサートだ…チケットを取った時にはずいぶん先の話だと思っていたのに、そこからジョンデのカムバやらEXOのカムバやらで、本当にあっという間でした。年末のソウルまで、体調を万全に整えて準備していきたいと思います(気合い)。

 

 

*1:日本でもよく耳にするとしたら、Carly Rae JepsenのI really like youなんかはまさしく80年代のポップスの再解釈だと思います。

*2:私は昔からジョージ・マイケルの声が大好きなんですが、ジョンデの甘い歌声は彼の声に共通するものがあると以前から思っています。そういえばCareless Whisperは、海外ジョンデペンの方たちがずっとジョンデにカバーして欲しいと言っている曲でもありますね。

*3:EXOの楽曲はR&Bがベースのものが多いので、そういう楽曲で抜群の存在感を発揮するギョンス がいないとどうなるかな…と思っていましたが、ベッキョンと二人、完璧にそれぞれの役割を果たしていると思います。