【抄訳】Billboard / EXO's 'Obsession' Album: How the Songs Came Together②

前置きは抜きにして、本題に参りましょう。Twitterでは割愛したJekyllの制作エピソードも、読むとソングキャンプの凄まじさがよくわかるので紹介しておきますね。例によって意訳混じりです〜!

 

★①はこちら

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【Jekyll】


EXO (엑소) - Jekyll (Color Coded Lyrics Han/Rom/Eng/가사)

 

Kaelin Ellis(作曲、編曲):

"Ko Ko Bop"が出た時のことを覚えているよ。だから(共作者のTay Jasperからソングキャンプの)招待を受けた時には「やったね!」って感じで、携帯を落としたぐらいだ。EXOはいつでも僕の「やりたいことリスト」の中に入ってたんだ。

 

5月のソングキャンプがやってきて、世界中の才能ある歌手、アーティスト、それからプロデューサーがキャンプのためにソウルに集結した。キャンプのために準備したトラックの中に、Jekyllの原型があったんだ。2019年の1月に始めたアイディアだったかな。その時点では完成していなくて、ドラムとメロディ少し(しかできてなかった)。あんまり気に入ってたわけじゃなくて、だからハードディスクに入れっぱなしにしてたんだ。SMのA&Rに聴いてもらったら「今週中に仕上げて」と言われた。

 

1月にこのビートを作り始めた時には、まったく同じビートのバージョン違いを2種類作った。K-POPのために曲を書いたことはなかったから、イメージを膨らませるために"Monster"のビデオを見たことを覚えている。音はなしで、彼らが踊る様子を観たんだ。とても映画的で、スリリングだった。それからもう一つのインスピレーションは、マイケル・ジャクソンだね。彼の音楽もまたダークだけど、叫んだり飛び跳ねたり、踊り出したくなるだろう。僕はゴスペル育ちだから、聴いてきたコードはマイナー(短調)のものが多い。教会音楽はコード変化が大きいから、「こういう教会音楽のバックグラウンドも取り入れたら面白いかもしれない」と思ったんだ。

 

キャンプ最終日、A&Rやお偉方が集まるリスニングパーティが開かれるという間際のことだった。その日の夜、他の作曲家たちはみんな曲を仕上げてきていた。僕はAaron Freshという歌手と一緒にやってたんだが、その前日はまるまる24時間作業をしてたんだ。音楽制作をしてきた中で、一番疲れていた日だね。

 

みんな疲れ切ってたから、ホテルに一度戻って、リスニングパーティに備えて休憩しようとしてたんだが、Tayが「徹夜でこの最後の1曲を仕上げるぞ」って言うんだよ。「どれのことだよ?」と尋ねたら「君がプロデュースした曲だよ!だから君にもいてもらわないと」って。それでレッドブル3本と、水を山ほど買い込んでまた作業に戻った。

 

徹夜で作業して、一睡もしなかった。気を失うように一瞬寝て、朝目が覚めたのを覚えてるよ。歌手やみんなが戻ってきて、「で、曲はどんな感じになった?」と聞いてきた。あれはすごく独特の瞬間だった。何か特別なエネルギーが部屋に充満していた。

 

リスニングパーティで、彼ら(SM)はドラムをもっと強くして、もっとベースを加えて欲しいと言ってきた。「わかった、いいね、やりますよ」って感じだったね。僕自身はたくさんの作曲家たちと「よし、今までにないようなものを作るぞ」って感じで挑戦できたことが嬉しかった。あんなに寝ずに起きていたことはかつてないし、僕は普段レッドブルは飲まないから、手が震えないように希釈して飲んだんだよ!ソングキャンプは本当にエキサイティングだった。

  

【Groove】


EXO (엑소) - Groove (Color Coded Lyrics Han/Rom/Eng/가사)

 

Blair Taylor(作曲、編曲):

Shinがハウスっぽい音にしたい、K-POPではあまり聴いたことのないような、何かふつうと違うことを試したいと言ったんだ。それで、このビートにShinがR&Bのコードを載せていったんだけど、そこからこの曲に命が吹き込まれた感じだね。何かオーガニックな(デジタルではない)ことがしたくて、その時にフルートのソロとか、ストリングス使いを思いついた。リッチさというか、高級さみたいなものが出るからね。僕たちは二人ともNeptunes*1に影響を受けてるんだ。ファレル(・ウィリアムス)のグルーヴ感が好きで、ああいうものを持ち込みたいと思ってた。

 

Shin Hyuk(作曲、編曲):

僕が強調したいこととしては、僕らはこの曲にハウスのグルーヴ感を持ち込もうとしたってことだね。彼ら(SM、EXO)にとってもちょっと新しいよね。最初にドラムのグルーヴを聴いた時、この上にR&Bのコードでこういうグルーヴの曲ができたらユニークで良いんじゃないかと思った。「一味違う感じにするにはどうしたらいいだろう?」と考えた。コード進行を思いついたときには、もうメロディを書き始めていたよ。

 

僕らはいつも心の赴くままに音楽を作ろうとしている。そしてユニークさを出すために僕らがトライしたのは、ブリッジの後にフルートを使うことだった。verseからコーラスができた後、(フルートを)やってみるべきだと思った。スタジオで踊りながらブレインストーミングしたんだよね。最後にフルートが入ったら最高だよね?って。

 

Blair Taylor(作曲、編曲):

もう作ったメインのメロディを流用したから簡単だったよ。すごく速くできたんだ。集中できて、頑張らなくてもアイディアが流れるように出てくる美しい瞬間って言うのかな。何か特別なことが起きてることはわかったけど、あそこまで重要なパートになって良い反応を得られるかどうかは確信が持てなかった。

 

Shin Hyuk(作曲、編曲):

書くのに30分もかからなかったね。BlairとNIveと作曲をするのはすごく楽しいんだ。僕らはSMとは良い関係だから「これを彼らに送ってみたら良いんじゃないか?どういう反応があるかな?」と考えた。どうやら気に入ってくれたようだった。彼らはいつでも「ちょっと違う」ものが好きだからね。

 

NIve(作曲):

この曲を聴いて初めて頭に浮かんだ言葉は「うわあgroovyだな」だったから、それをそのまま使うことにした。その単語が頭から離れなくてね。だから”I just wanna make you groove, babe”と歌うことで、その単語に命を吹き込むことにした。

 

EXOは本当にクールだ。個人的には、彼らはK-POPにおいて最もクールなグループの一つだと思う。そして彼らには上品さもあるよね。"Tempo"や"Love Shot"を見れば、EXOがクラシックに着想を得たような音楽も含め、あらゆるタイプの音楽を消化できるグループだということがわかる。 

 

【Ya Ya Ya】


EXO (엑소) - Ya Ya Ya (Color Coded Lyrics Han/Rom/Eng/가사)

 

Dem Jointz(作曲、編曲):

SWVから始めたんだ。サンプリング音源として繰り返しの要素があるものを探していて、”You’re The One”を使うことにしたが、最初は全く何の構想もなかったんだ。アップテンポで、モダンな感じにしたかった。原曲は90年代のテンポ感だったから、もう少し今っぽくするためにビートのパターンを変えようと思った。

 

曲を書く時、僕は性別役割をなるべく感じさせない、普遍的な作品にしたいと考えている。女の子の目線から見ていい男を追い求めるとか、その逆も然り(そういうものは書かない)。なるべく全ての人に当てはまるようなものにしたいんだ。歌手のためだけでなく、どんな聴き手にも共感してもらえるようにね。

 

 

 

ようやく5曲目まで到達しました。ソングキャンプの様子、非常に興味深いですね。最終日のリスニングパーティに向けて、才能あるプロデューサーが全力で曲を仕上げにかかるって…ちょっと想像を絶する光景です。クリエイターの人たちは誰もが「良いものを作りたい」という欲求の塊でしょうから、他のアーティストに囲まれると、普段の力以上の力が引き出されそうですよね。そういう意味で、彼らの能力を限界ギリギリまで引き出するには、この方法は効果的なのかもしれません。

 

Grooveのフルートのエピソードもとても印象的。あの後半のフルートの使い方は、確かにK-POPではあまりなかった気がします。こういう音はハウスだとたまに聴くな…という印象でしたが、この曲の構想が「ハウス+R&Bのコード」だったという話を読んで、納得しました。そして作曲中の魔法のような瞬間…良い作品ができる時特有のものなのでしょうね。

 

それから、編曲者のお二人がNeptunesに影響を受けているというのも個人的には胸熱でした。彼らは凄腕プロデューサーチームですが、N*E*R*Dの名義で自分たちもアーティストとして活躍している人たちです。なんとも気持ちの良いリズムの、誰もが踊りたくなるような曲を作るんですよね。私の青春時代は彼らの音楽とともにあったと言っても過言ではないので、ファレルとチャドの影響を受けたプロデューサーが今度はEXOの音楽を書いてるのか…と思うと、音楽オタクとしてはたまらないものがありました。きっとファレル・ウィリアムスの"Happy"は、普段洋楽をあまり聴かない方でも耳にしたことがあるのでは?

 


Pharrell Williams - Happy (Official Music Video)

 

 

 

同時にこんなことも考えました。沢山の人が関わっているメリットは大きいのだろうけど、それはそれで難しい面もあるのだろうなと…

 

 

*1:ファレル・ウィリアムスとチャド・ヒューゴによるプロデューサーチーム。アメリカで特に90年代から2000年代にかけてヒット曲を連発していた。